サラブレッドの小眼球症は4、500頭に1頭と言われています。人間の場合は1万人に1人。サラブレッドにこうした病気や奇形が多いのは、近親交配が大きな理由のひとつだと考えられます。サラブレッドは血を重ね合わせてつくられてきた歴史があり、それはサラブレッドの宿命とも言えるのかもしれません。
★当チャンネルの主旨
2024年2月29日、うるう年のその日に福ちゃんは碧雲牧場にて生まれました。
小眼球症という病気を持ってこの世に生まれてきた福ちゃんが無事に成長し、母となり、その子どもたちが競馬場で活躍する夢と希望の物語を見守ってもらいたいと思い、このチャンネルを立ち上げました。
★福ちゃんプロフィール
父タイセイレジェンド、母ダートムーアはダイナカール牝系。JRAで4勝。エンプレス杯、レディースプレリュード3着、レパードS5着の実績あり。全兄はUAEダービー3着のプラムドパシオン。
生まれたときから小眼球症で左目が見えない福ちゃん。片目以外は健康そのもの。肢が長くて、飛節や膝などの骨格もしっかりとして馬体も大きく、とにかく良くお乳を飲みます(お母さんが困ってしまうぐらい)。そして、今のところ何の不自由もなく、お母さんと一緒に、元気に放牧地を走り回っています。
それでも彼女は競走馬にはなれません。JRAの規定において、馬名登録前に片目を失明した馬は登録が認められていません(馬名登録後に一眼のみを失明した場合は、平地競走に限り出走できることになっています)。競走馬になれないということは、セリで売ることができず、牧場にとっては育てる経済的メリットはなく、生まれたときに処分されてしまうのが普通です。サラブレッドは経済動物であり、商品なのです。遺伝子のいたずらで、ある一定の確率で発症する小眼球症の馬を、私たちがほとんど見たことがないのはそういう理由です。 *のちにいくつかの地方競馬場であれば、能力試験に受かればレースに出走できることが判明しました!
しかし、碧雲牧場の皆さんは福ちゃんを育てたいと願いました。繁殖牝馬のオーナーとして最終決断を委ねられた僕も、全く同じ想いでした。流産や不受胎を経験した上に、1年間待ち続けてようやくこの世に誕生したとねっ子が生きる道を何とかしてみつけたい、というのが素直な思いでした。私たちは甘いのかもしれませんし、ハッピーエンドになるのかバッドエンドかも分かりませんが、福ちゃんの大冒険は始まったのです。
★名前の由来
かつて日本では、心身になんらかの障害をもって生まれた子どもが、その家に富や幸福をもたらしてくれるということで「福子(ふくご)」として大切に育てられたという伝承があります。その「福子」の福であり、また幸福の福です。